股関節の詰まりに関して〜FAIとその他と〜
「股関節が詰まる感じがして痛い」
こんな訴えを聞くことがあります。
特にサッカー選手に多いでしょうか。
今回はそれに関してです。
(1)概要
股関節のつまりは、
・器質的な変化が問題になっているもの
・機能的に問題が起こっているもの
・両方の混合
に分類できます。
器質的な問題があるものの多くは【大腿骨寛骨臼インピンジメント (Femoroacetabular impingement)】と呼ばれています。(以下FAI)
(2)FAIとは
大腿骨側に問題が有る
・cam type
臼蓋側に問題が有る
・pincer type
両方が組み合わさった
・combined type
があります。
カムタイプは大腿骨頚部が張り出しているため、臼蓋と衝突して軟骨損傷が起こります。
ピンサータイプは、臼蓋の被覆が過剰な場合に多く関節唇が挟まれたり、寛骨臼の辺縁と大腿骨頚部がインピンジすることで軟骨の損傷が起こります。
この二つのタイプがそれぞれ進行していくと、2つのタイプを併せ持った状態に変化していきます。
文章だけだとわかりにくいので、動画をご紹介します。
カムタイプ
ピンサータイプ
(3)機能的な問題による「詰まり」とは
上記のような器質的な問題がなくても、もしくはそれほど問題となるほどの変化がない段階でも、股関節の「詰まり」を訴える例は多くあります。
この場合は、股関節の機能的な問題が発生していると考えられます。
肩関節を考えるとわかりやすいです。
肩のインピンジメント症候群は、色々な原因もありますが、主に棘上筋と三角筋のトラブルと表現されることが多いですよね。
棘上筋をはじめとした、ローテーターカフが上腕骨頭を安定させ、関節内運動である滑りや転がり、回転を適切に作り出すことで、肩甲上腕関節の瞬間回転軸を作り出し、インピンジメントが起こらないようにしています。
股関節でも、同じような働きが、主に
・腸腰筋
・外閉鎖筋
・梨状筋
・小殿筋
・内転筋群(股関節やや外転位の時)
によって生み出されています。
ということは、機能的な問題で詰まり感がある場合は、これらの筋の機能を改善してあげられれば改善する可能性が高いということです。
少し詳しく見ていきましょう。
(4)股関節の安定と瞬間回転軸を作り出す筋
【腸腰筋と外閉鎖筋】
大腿骨頭をぐるっと回り込むように走行していることで、股関節の瞬間回転軸の形成に最も重要と思われる。
・腸腰筋
・外閉鎖筋
・腸腰筋と外閉鎖筋と大腿骨頭の位置関係
【梨状筋と小殿筋】
この2つは、筋の走行により、大腿骨頭を寛骨臼に押し付ける作用が考えられ、安定性に関与していると思われる。
・梨状筋と小殿筋
【内転筋群】
内転筋群は、立位の静止時はどちらかと言えば大腿骨頭を上方へ逸脱させる力として働くが、股関節が外転位にあるときは、大腿骨頭を寛骨臼へ押し付ける方向へとベクトルが変わる。
・長内転筋
(5)「詰まり」への対処方法
以上、主な「詰まり」感の原因を見てきました。
では、これを改善するにはどうすればいいのでしょうか?
まず、器質的問題のあるFAIの場合。
一般的には、
FAI
→ インピンジメント
→ 関節唇損傷
→ 関節症(変形性関節症など)
の経過をたどるとされています。
こういった場合は、その時点での関節唇などの損傷度合いにもよりますが、最終的には手術が選択されることもめずらしくありません。
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では機能的なトラブルでの「詰まり」はどうでしょうか?
トレーナーとしてはこちらの改善を是非出来るようになりたいものです。
方法としては、ざっくりと、関連のある筋を
・緩める
・促通する
・教育する
・鍛える
です。
全てのこともありますし、どれか、ということもあります。
具体的な手技や、方法はなんでも構いません。
要するに、
上記の筋がしっかりと、適切に働いている、働ける環境を作ってあげられれば何でもいいです。
もちろん、上記の筋に直接アプローチするのも1つですし、
この筋が働くためには、ここに手を加えないといけない!という場合も出てくると思います。
それは個々のケースで違いますが、その一例の紹介は次回以降に・・・・・・
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